5月に観た映画のなかで良かったのは、ガス・ヴァン・サント監督の「ドント・ウォーリー」。アルコール中毒、交通事故に遭い、車椅子での生活をすることとなった実在する風刺漫画家を演じたのはホアキン・フェニックス。唯一の救いのように、登場するミューズを演じるは、ルーニー・マーラ。スパイク・ジョーンズ「her」でも印象的なタッグでしたが、今回の映画も素晴らしかった。先日のふたりの婚約報道が本当だったら良いなと思っています。もう一度観たいと思っていたら今月末、出町座さんでかかるそうです。余談が長くなりましたが、それでは2019年5月の書店売上ランキングをご紹介します。
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1位『ねえさんといもうと』シャーロット・ゾロトウ 酒井駒子(あすなろ書房)
2位『数学の贈り物』森田真生(ミシマ社)
3位『あそびうたするものこのゆびとまれ』中脇初枝ひろせべに(福音館書店)
4位『石の辞典』矢作ちはる内田有美(雷鳥社)
5位『あそびうたするものよっといで』中脇初枝ひろせべに(福音館書店)
6位『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』斉藤倫高野文子(福音館書店)
7位『日本発酵紀行』小倉ヒラク(D&DEPARTMENT PROJECT)
8位『天文学と印刷新たな世界像を求めて展覧会図録』(凸版印刷株式会社印刷博物館)
9位『漱石全集を買った日』山本善行 清水裕也(夏葉社)
10位『ムービーマヨネーズ第2号』Gucchi’s Free School
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第1位は、シャーロット・ゾロトウの作品を、酒井駒子さんが再訳し絵を描いた一冊『ねえさんといもうと』。酒井さんの絵をあしらった当店オリジナルのブックカバーを特典としてお付けしていましたが、早々に完売しました。もちろん、絵本本体は引き続き取り扱っております。
第2位は、独立研究者・森田真生さんのエッセイ『数学の贈り物』です。5月26日、森田さんのトークライブ「数学ブックトーク」が開催されました。遡ると、5年ほど前から当店のイベントスペースで三ヶ月に一度の定期開催いただいているイベントです。今回のトークテーマは「ことば」や「偶然性」でした。九鬼周造の『偶然性の問題』を噛み砕き、『インティマシーあるいはインテグリティー』から親密さ、関係性について語る。この通り、数学というタイトルがついていますが、森田さんが扱う分野は様々です。哲学の古典や人文科学の本などを読んでみたいという方は一度参加されてみてはいかがでしょうか。次回は8月、真夏の開催を予定しています。当店発行の冊子『ブックリスト:『数学の贈り物』と80冊森田真生インタビュー「読書」について』の残部は10部ほどとなりました。こちらもあわせてぜひ。
第3位、第5位は同時発売の絵本『あそびうたするものよっといで』と『あそびうたするものこのゆびとまれ』です。文、中脇初枝。絵、ひろせべに。5月25日には、イベントスペースにて中脇さんのお話会が開かれ、会場を覗いてみると子どもたちが楽しそうな声が聴こえてきました。生活館ミニギャラリーにて6月7日までひろせさんの原画展も開催しています。
4位は、ライターの矢作ちはるさんが文を書き、内田有美さんが絵を描いた『石の辞典』です。あらためて、内田さんが描かれる石の絵の美しさに驚きました。写実的でありながら、絵でしか表現できない暖かさ、デフォルメの加減が見事です。ご自身も蒐集家だという矢作さんのテキストもイラストや本の佇まいにぴったりです。
第6位は、『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』。やたらと長い題名や、高野文子さんの挿絵をきっかけに手に取られる方も多いと思いますが、身の回りに子どもがいる方にはぜひ読んでいただきたい。詩人の斉藤倫さんが、小説の形をとりながらまど・みちお、萩原朔太郎らの詩を紹介する一冊です。先日、小学4年生の姪と一緒に交互にこの本を音読しましたが、詩を読み上げてはケラケラと笑っていました。
第7位は、発行デザイナー・小倉ヒラクさんの『日本発酵紀行』です。ヒラクさんといえばデビュー作『発酵文化人類学』(木楽舎)でご存知の方も多いはずです。待望の二冊目の本。8ヶ月に及ぶ、47都道府県の発酵文化をリサーチするフィールドワークの旅を記録した一冊です。発酵食とは、その地の食文化や気候、あらゆる暮らしが色濃く反映されるものです。ローカリティ、人類学、そして発酵。様々な角度から読む人によって顔を変える、射程の広い本です。発行は、『d design travel』のD&DEPARTMENT PROJECTから。
トークイベントのご案内。7月19日(金)19時開演。小倉ヒラクさんのトークイベント「『日本発酵紀行』刊行記念“発酵”で日本の歴史と暮らしをわかる!8か月間の発酵の現場をめぐる旅で見えたもの。」発売以来『発酵文化人類学』が当店ではロングセラー。待望のヒラクさん本人のトークイベントです。平日ですが、満員で当日を迎えたいと思っています。ぜひご参加ください。詳細、ご予約はこちらのイベントページから。
第8位は、東京の印刷博物館開催された展示の図録『天文学と印刷新たな世界像を求めて』。天動説から始まり、万有引力へ。天文学の歴史と知の蓄積、発展を「印刷」というキーワード、技術、テクノロジーから追ったスケールの大きな一冊です。こちら、一時品薄でしたが追加の在庫が届きました。
第9位は、夏葉社新刊『漱石全集を買った日』。古書店主とお客さんによる古本入門。善行堂の山本さんが、お客さんである「ゆずぽん」こと清水さんに本を読むようになった経緯や普段の読書について聞いた一冊です。関西圏の古本イベントなどに必ずといって良いほど顔を出すゆずぽんさん。恵文社にも時々立ち寄ってくださいます。昔から知っている方だったので、夏葉社から本が出ると聞いた時は驚きました。古書ファンとしてはまだ若い年齢のゆずぽんさんですが、その目利きもさることながら、古書店やイベントなど、その古書を買った場所や体験すら楽しまれていて、本当の本好きってこういう人のことだと会う度に思わせてくれるお客さんです。読みやすく、面白い一冊なので、古本に詳しくない方にもおすすめできます。
第10位は、日本未公開の映画を紹介・上映するGucchi’s Free School 制作のリトルプレス『ムービーマヨネーズ第2号』。5月17日には、主催の降矢さん、みなみ会館の吉田さん、尾関さんによるトークイベントを開催しました。みなみ会館のリニューアルオープンが待ち遠しい。
長くなりましたが、今回は以上です。また来月もお楽しみに。
(鎌田)