第二十一回 「夜長堂 in 天神さん」

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2008年7月25日。炎天下のなか東から洛中「北野天満宮」へ自転車コキコキ行って参りました。お目当ては「天神さん」の古道具。と看板娘の「夜長堂」。今回は左京区を離れ、店舗ではなく月1回の骨董市「天神さん」に出店する「三角屋」さんと、弟子である「夜長堂」さんを訪ねました。ミンミン蝉の合唱と直射日光に包まれて、早朝からビールをやりつつ碁盤の目を闊歩しました。いや~~~暑い!!
恵文社が信頼を寄せる古道具商「夜長堂」。店舗は無いが、いつもどこかで何らかのイベントや市に参加、もしくは企画。今回は京都、北野天満宮で毎月25日に行われる骨董市「天神さん」に恒例で出店中の夜長堂さんを直撃。この市では夜長堂さんのお師匠さんである岐阜県「三角屋」さんのお手伝いをされているそうです。せっかくなので三角屋さんにもお話を伺ってきました。

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Exif_JPEG_PICTURE左:三角屋、山本昭仁さん
右:夜長堂、井上タツ子さん

-お二人の出会いは?

(以下、Y「」内は夜長堂さん、S「」内は三角屋さん)

S「最初は四天王寺の市(*1)の客で来てくれてたんや。ジュリー(*2)の写真を集めて欲しいって頼まれてたから集めてたんやわ。可愛かったから一生懸命集めとったけど、理由聞いたらびっくりしたわ。」

- 夜長堂さんは今でもたいへんなジュリーファンでいらっしゃいますよね。
Y「昔好きだった人がジュリーに似てたから..そのうちほんまにジュリーが好きになってしまって。」
S「最初はジュリーばっかりやって、古いもんとか雑貨にはあんまり興味持ってなかったよな。」
Y「まだ未知の世界っていう感じ。でも短大を卒業した後”ときめきスタイル社”(*3)っていう八尾のカリスマ古着屋の在庫整理してて、そこで見た古い物の風景に影響はされてました。」

- 三角屋さんが古道具屋さんになったきっかけを教えて下さい。
S「サラリーマンしてたけど、会社が嫌でたまらなくなって28歳の時に辞めたんです。もともと古い物が好きやったんやけど、ちょっと不純な動機もあるな。パチンコで負けて借金してたんやけど、実家に古いものが沢山あったんです。それ売ったら高く売れたんですよ!買取価格が1つ10万とか。祖母が好きで集めてたやつで、これは高いもんやっていうのは知ってたんやけど。そういうのを売ってパチンコ代にしたりしてました。」

- うわー..今もなんですか?
S「この商売始めてから(パチンコは)辞めました。」


(左)朝は7時ぐらいから。荷出しが終わるのは8時ぐらいだから、慌てなくとも大丈夫。(右)1940年代輸出用の白磁。当店にも沢山卸してもらっている。長らく売れ筋一直線。

- どこから古い物を集めるんですか?不思議に思ってる方が多いと思うのですが。
S「資本金20万からやったからね。最初は田舎の古いお家を回って、要らない物を安くで買ってたんです。当時はお金なんか貰えなくてもとにかく捨てたい、っていう人が多かった。だからタダで貰ったり、安くで買えた。当時は店舗は持ってなかったから、こういう骨董市に出して稼いでました。」

- うちの実家にもよく来てたみたいですよ。着物とかハギレは無いか?っていう人がよく来るみたいです。断ってるみたいですけど。
S「嫌がる人も多いんや。サイレン鳴らされたり塩まかれたりしたわ。今はお陰さんで買取の電話がかかってくるから、回らないけど。」

- 面白い商売ですよね。どんな物が売れ筋なんでしょうか。
S「最初は江戸とか、明治時代のものばかり扱ってました。お客さんもお年寄りばっかりだったんですよ。資産としての骨董を重きにおいて、観賞用・美術品としての古いものばっかり。昔は昭和のもんは見向きもされへんかったけど、今は随分変わって、若い人で古道具にあんまり興味が無い人でも可愛いからって買ってくれる。見て楽しむだけでなく、ガラスケースに飾りながら実用的に使ったり。それはそれでええと思う。自分の前の世代の古道具屋さんと、後の30代の古道具屋さんとは扱ってるものも全然違うと思う。」

- 今度は夜長堂さんのお話を聞かせて下さい。実はイラストレーターでもあり、フォトグラファーでもあり、 名品喫茶 「大大阪」(*4)店長代理でもあり、新地のスナックのおねえちゃんでもありますが..その遍歴を教えて下さい。
Y「奈良芸術短期大学でグラフィックデザインを学んだ後、 凸版印刷株式会社のOLやってたんです。その時代に四天王寺の市で三角屋さんに出会って、会社を退職後アルバイトをすることになりました。 同時にイラストレーターの活動も頑張っていたのですが、丁度絵を描くことに疲れた時期があって。入ってくる仕事にもギャップを感じてたんです。そんな時に色んな人たちとの出会いが重なって、一旦すべての個展や制作活動をストップして、「夜長堂」の名前で活動をすることに。昔は大阪のうつぼ公園にあったレコードショップ”ロコジョージ”(*5)に間借りして レトロ雑貨や古着の販売もしてました。今は他のショップの要望を聞いて雑貨を集めたり、それとは別に絵を描いたり展示会を企画したり。写真撮影の依頼も受けてるし、大大阪の店長代理もやってます。新地のスナックのバイトは11年以上です。そこでも色んな人との出会いがあって、今に繋がってます。生活すべてが表現活動で、毎日が完全燃焼。」

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(左)アツい..。この日は猛暑で汗だく。暑さのあまり集中できないので、お客さんが少ないとか。常連さんも多い。沢山買うとオマケしてもらたり、と値切りの交渉も楽しい。(右)木のボードが可愛い。この北欧輸出用の花瓶は当店でも販売中。市でも尋常ではない売れ方をするらしい。若い人から年配の方まで、客層はかなり幅広い。

- 全身表現者(笑)。夜長堂さんとお話しているといつも元気が出ますよ!店舗を持たずに展示会や卸を中心に古道具を販売する、という活動形態はどうして?
Y「近所に昔から憧れてるプレハブの回転焼き屋さんがあるんです。その店の看板に”姿は見えねど何時でもお焼きしてお待ちしております”って書いてあるんです。それがそのまま経営理念。店舗がないから染まり易いんですよ。色んな場所で吸収して仕事をしてきました。」

- 面白い。動き方に無理が無いというか、必ず理由があるんですよね~。
Y「それぞれのショップのカラーに合わせるのは苦じゃなかった。でも自分らしさというものを考え始めた時、紙モノを作り始めました。今紙モノブームみたいやけど、自分は古物に関わってきて自然にこうなりました。」

-古道具の魅力って何だと思いますか?私は古い家に生まれたから倉を漁る愉しみ、みたいなのは子どもの時に経験して、今でも古い物が好きですけど。
Y「私はあんまりそういうのは無かった。でも父親が明治生まれで古い物には愛着があったから、DNAみたいなのはあるかも。前にも言った通り、古着屋で働いた事は大きいですね。古い物を見て懐かしいと思う人もいるかもしれへんけど、私は新しいと思った。若い子らは”何コレかっこいい”っていう新鮮さで買っていく、そんな感じです。1950年代当時の日本人の食卓はアルマイトとかシブいもんばっかりだったでしょう。ある時、70年代のプラスチックとかポップな色の雑貨が流行った時があって、仕入れに行ったんですよ。渋い食卓に鮮やかなプラスチックが登場した時の人の感動が分かった。奇想天外な物は面白い。」


あっ、いたいた。おまけ画像。第十一回お店探訪「田中美穂植物店コーヒショップ」の田中美穂さん。お父さんの露店のお手伝い。イヤイヤ手伝ってると言っていたのに結構楽しそうにやってる。「ヤクルト飲む?」と誘われた。

- 好きなことをやっている、というだけでなく仕事に対する意識が高いなっていつも思います。性格でしょうか?
Y「仕事に対する意識、業者さんへの礼儀を教えてくれたのは三角屋さんですね。あとはお母さんの影響。子どもを育てる為にいつも一生懸命で、愚痴は言わない。仕事があることにいつも感謝して、明るく元気に働く人でした。」

- 今後の展望を教えて下さい。
Y「日本の可愛いグッドデザインなものを海外の人にも紹介していきたいと思います。全然知らない土地の人に見せた時の反応をみてみたいです。」

- 最後にお店探訪をご覧の皆様に一言。
Y「姿は見えねどいつ何時でも開店しておりますのでよろしくお願い致します。」

古道具屋という商売柄か、どこかしら飄々としたお二人。いつも一緒に市を出していると夫婦や兄妹に間違えられるそうですが、実は師弟関係であり、親子のような関係でもあると言います。自由な気質でありながらちゃんとそろばんは弾いている、というバランス感覚はカッコイイ。夜長堂さんとは3~4年のお付き合いになりますが、プロのバイヤーとして信頼を寄せているのはもちろんですが、それより仕事の仕方や人との付き合い方、すべてにおいて意識が高いことに驚かされっぱなしでした。次は何をするんだろう、と期待させてくれる稀な人物です。

(椹木)

*1 大阪、四天王寺の骨董市。毎月21日、22日に開催。
http://www.shitennoji.or.jp/gyouji2/gyouji4.htm
*2 書くまでもないが元タイガースのボーカル「沢田研二」の愛称。夜長堂さんは今でもコンサートに行くらしい。
*3 大阪、八尾駅近くにあった古着屋。残念ながら閉店。渋くて頑固な店主がいい味出してたそうです。
*4 大阪、中ノ島に位置する大正14年築「ダイビル」内にある名品喫茶。店長は育児休暇中の為、夜長堂さんが店長代理をしている。店内の雑貨をセレクトしたり、展示会を企画している。
*5 大阪、西区京町堀にあった雑貨屋。現在は閉店。夜長堂さんが以前、スペースをレンタルして出店していた。色々な業者さんがスペースを借りているマーケットのようなお店。

・三角屋
岐阜県多治見に店を構える。土日だけ開店。普段は業者向けの古道具の卸をしている。夜長堂の古道具屋としての師匠でもあり、親のような存在でもあるらしい。
大阪・四天王寺「骨董市」(毎月21日)、京都・北野天満宮「天神さん」(毎月25日)の出店は古くから続いている。

岐阜県多治見市本町6丁目10-1
土日のみ営業
12:00~19:00ぐらい

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・夜長堂
実店舗は無し。毎月15日の京都、知恩院「手づくり市」も定期的に参加中。年に何度か展示会を開催。復刻紙シリーズは夜長堂の定番になりつつある。今後の活動は夜長堂ウェブサイトにてチェックして下さい。
http://yonagadou.com/
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(※2016年現在、実店舗兼作業場をオープン。不定休。)
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