第三十四回 KIYATA 若野 忍(モシノシノブ)さん(木工作家)

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個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「いちじょうじ 人間山脈」。今回ご登場いただいたのは、森の動物を中心に、木彫りで手鏡や椅子・鞄などを作られている夫婦ユニット、KIYATAの若野忍さんにお話を伺いました。

―KIYATAさんの作品はただ可愛らしいだけではなくて、動物の目の表現やデフォルメの仕方に、どこかアイヌや東南アジア系の民族性を感じさせられるのですが、ご自身でなにかそういうものを意識したり、ものづくりのベースにしているものがあるのでしょうか?

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いきなり核心にふれる質問ですね(笑)そう、原始美術は昔から大好きでしたね。幻想的なアニミズムの世界、アカデミックな造形の素養とか、作家性とは無縁の粗放でストレートな造形…特に興味を持ったのはアフリカ美術です。中でもメトロポリタンで見たアフリカのお面は衝撃でしたね!もう、脳みそを鷲掴みにされて揺らされるぐらいの衝撃!これはきっと神様としてアフリカの村に祀られていたんだろうなと思いましたね。

ただそれを直接自分の作品に取り込もうと思ったことはないんですよ。現代社会に生まれて大学で美術教育を受けた自分がそれを取り込もうとしてもただのマネにしかならないと思いましたから。 で、美術大学の絵画科だったんで自分の進むべきは現代美術だと思い、四苦八苦して自分の作品の行き着く先を模索しましたね。 その後10年ぐらいかけて駄作を量産した後、ストンと、自分の中にある原風景や神話みたいなものに気付いたんです。
それは、遠くの山をみながらそこに住む空想の動物を想像して絵を描いたり、事象の裏に隠された世界のストーリーを想像していた、子どもの頃の自分の世界でした。そして気付けば大人の僕も確実にその世界にいる。現代人の僕もちゃんと自分のアニミズムとか神話を持っているじゃないですか!以来ひたすらその世界を形にしてきました。とにかくイメージを形にするのがすべてだったので、さまざまな造形の技術をほぼ独学で身につけていって、最終的に木に行きつきました。そうして出来た現在のKIYATAのスタイルはオリジナルの神話と独学のせいかアカデミックな匂いのない造形表現で、原始美術に通じるものになった気がします。


―なるほど。物から物づくりに入る人と、たまたまひとつの表現として物づくりに至ったという人がいると思うのですが、KIYATAさんは後者のようですね。やはり芸大でアカデミックなものを学ぶと、少なからず無意識の内に作家性を身につけてしまうところがあるように思います。自ら型にはめ込んでしまうというか。そういう意識から解放された時に、幼い頃の記憶や好きだったものが大きく影響してくるのでしょうね。
最近お二人にはお子様が生まれたばかりですので、その世界に新たに子供の世界が加わりそうですが、今後イメージされている展開はどんな感じでしょうか?

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昔はとにかく内向きに作品のインスピレーションを探していましたが最近はずいぶん変わってきました。生まれた子どももそうですが、KIYATAの作品を楽しみに待ってくれるお客様が増えてみんなで一緒にKIYATAの森を旅している気持ちです。僕と妻はその案内人のような存在でしょうか。みなさんが欲しいものを探してあげたり、びっくりするようなものを見つけて来たりと。 今後は、森で採集の旅をつづけるKIYATAキャラバンのような、そんなストーリーを展開自体に持たせたいですね。
途中子どもが生まれたり、結婚式があったり、家を建てたり、お祭りとかお洒落したり…そういうさまざまなシーンに合わせて作品を作って行ったら10年後、20年後にはちっちゃい民族史ができたりして…

―うーん…夢がありますね。では最後に座右の書をご紹介いただけますか?

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(Abenteuer Kunst: Der Tanz der Tiere. Afrikanische Masken)

7、8年前に神保町の古本屋で見つけたアフリカのマスクの本です。ドイツ語なので読めないんですが、アフリカの素晴らしいマスクを少しも野趣を損なわず、モダンなエディトリアルデザインで見せているんです。そういったこの本のバランス感覚が僕にとって一つのお手本で定期的に読み返しています。

子育てと制作で慌ただしい中、インタビューに答えてくださったKIYATAさん。独自の表現の追求から生まれた木工作品は手作りならではの温かみや味わいがあり、小さなモチーフにもストーリーや背景を感じさせてくれます。新たに加わった世界からどんな作品が成長していくのか、今後の展開をお楽しみに。

KIYATAホームページはこちら

(七里)