第三十回 田中敦子さん・洋司さん(atat)

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個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「一乗寺人間山脈」。今回は姉弟で革小物を作りはじめて、今年で活動10周年となるatat(アトアト)の田中敦子さんと洋司さんのアトリエにお邪魔して、お話を伺ってきました。(以下:田中敦子さん=敦・洋司さん=洋)

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(写真1)革をカットする敦子さん

―恵文社との関わりはいつぐらいからですか?

敦>取り扱いは2002年からですね。atatの立ち上げが2001年からなので、始まってすぐぐらいに、ギャラリーアンフェールをレンタルさせて貰ったのがきっかけです。展示が終わった時に当時のスタッフの三木さん*1から声をかけていただいて、作品をお店に置かせてもらうようになったんです。

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(写真2)木づちで革を打抜く洋司さん

―商品の案はお二人で出されるのですか?

敦>お互いが銘々に一から十まで作って完成する事が多いので、そんなに相談はしないかもしれない…新しい物を作るときは、相談ではなく「こんなんがあったらどう?」みたいな感じではしたりしますけど。
洋>相談というか、既に決まっている感じが多いかも…
敦>でも出来たもんに駄目出しはせぇへんね。「もう決まってんねやろ?」みたいな。(笑)

―手縫いにこだわって制作している理由は?

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(写真3)色とりどりのお二人のアトリエ。奥に見える丸いものは針山の芯の部分。これから商品に生まれ変わります。

敦>かっちりデッサンを描いて「この通りに作ろう」と決めているのではなく、革を見ながら形を作れるので、そのスピードが手縫いに一番合っているからですね。
洋>目打ちとかもフォークみたいな形の目打ちを使うんじゃなくて、キリみたいなもので一個一個空けているので、(完成が)遅いのはデメリットだけど、大きさの違う物同士をくっつけたりとか、曲線同士を繋ぎ合わせるとか立体にしたりとかができるから、手縫いにしています。

―ちなみにアトリエにある棚が凄いですね。沢山の引き出しがあって、とても年期が入っています。

洋>部品のストックが入っています。
敦>昔は家が金物屋をやっていたんです。その時の釘とか三角ペコとかの金物のパーツをこの棚に保管していたみたいです。今は細かなものを入れたりしています。
洋>なので、今使っている道具だとかも、その当時作られていた道具を未だに使っていたりするんです。
敦>曽祖父は金物職人だったので、銅を叩いてお鍋とかお玉とか真ん丸な可愛い物を色々作っていたみたいですよ。
洋>昔から何か作っている血なのかもしれませんね。

―では最後に座右の書をご紹介してください。

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左:洋司さん選『今夜、すべてのバーで』(中島らも/講談社)
右:敦子さん選『森へ行く日 舟越桂 作品集』(求龍堂グラフィックス 1992年/サイン入り)

洋>これは19歳ぐらいの時に買いました。アルコール中毒の闘病記みたいな内容なんですけど、そうなるに至った経緯だとか、病院の中の色んな事だとか…そういう内容です。らもさんのファンだったんですけど、その中でもこの小説の主人公に大分共鳴する所があって…(お酒を飲む)習慣はないですけど、その点この本が反面教師になっている部分があります。これを読み返すたびにまた違った読み方ができる本です。
敦>舟越桂さんは昔から好きで、大学時代に手に入れたんです。桂さんの一番最初の作品集ですね。後ろにある作品も好きなんですけど…やっぱり本物見た時の空気感を思い出すためのものですけれどね。実は桂さんの作品を運んでいた運送会社の方にお願いして桂さんのサインを貰っていただいたんです。(笑)

―なんだかお二人の性格の違いがよく現れていますね。ほのぼのとした楽しいインタビューでした。ありがとうございました。

ウェブサイト:http://www.atat-book.net/

*1現・tinycrown 店主のイセキアヤコさん。http://www.tinycrown.com/

(七里)