第八回 松尾和夏さん(カトレア草舎 作家)

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個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「いちじょうじ 人間山脈」。

第八回は恵文社の元スタッフでもあり、現在は「カトレア草舎」として絵や文具、紅茶の制作販売をしている松尾和夏さん。恵文社でのアルバイトを経て、大学を卒業後に作家としての活動を開始し、東京に活動の拠点を移してからますます精力的に活動の幅を広げています。今回はスタッフ行きつけの居酒屋・いづぼんにてお話を伺いました。

―松尾さんはそもそも恵文社のスタッフでしたが、いつ頃から働かれていましたか?

大学2年の頃からなので、入社したのは2003年ぐらいからですね。大学に入った頃、先輩が大学内のイベントで宇野亜喜良さんと田名網敬一さんの講演会を企画していたのでそのお手伝いをしたんです。60年代のイラストレーションにまつわる講演会で、司会を近代ナリコさんにお願いしました。モダンジュースの宇野さんの特集号をみて、編集者の近代さんが京都在住ということもあり、どきどきしながらみんなで連絡をとったのを覚えています。そのつながりで会場での物販を恵文社にお願いしました。そのあと、ギャラリーアンフェールで宇野さんの企画展*1があって近代さんのお手伝いをしに行ったりもしました。そうやってなんとなく面識ができ、その後アルバイトとして入ることになったんです。

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―恵文社もかなり長く働いていましたよね。その後東京に行かれてカトレア草舎として活動されていますが、東京に行ってやはり変化はありましたか?

東京へ行ったことが直接関係しているわけではないのですが、雑誌や、お店で商品をみたという方からお問い合わせを頂いたりして、すこしずつ活動の幅は広がっています。あと、作家活動だとひとり家にこもりがちなので、東京でデザインの仕事をして働いている友人の話が聞けるのもいい刺激になっている気もします。

―紅茶も手掛けていますが、イメージはやはり物語から来るのですか?

紅茶のブレンドは、フランスのティーブレンダーが行っています。うちの紅茶はすべて一人のフランス人の女性ブレンダーが作ったフランス紅茶なんです。はじめて彼女のフレーバーティに出会ったとき、その香りとブレンドの豊富さに驚きました。一つひとつがまったく違っていて、まるで絵本のような紅茶だなぁとおもったのがはじまりです。
絵や文具ははじまりから最後まで自分一人のイメージで制作しますが、紅茶の場合は違います。ものすごく沢山ある彼女のフレーバーティの中から、インポーター(紅茶の輸入者)に自分のイメージを伝えて、サンプルを取り寄せて試飲をして選びます。実際に飲んでみて飲みやすいかという点もすごく重要なので。あと選んだ紅茶のすこしでも多くのことをインポーターさんに聞くようにしています。その方も女性なのですが、紅茶のプロなので本当にたくさんのことをいつも教えていただいています。
すべてのフレーバーティには、ティーブレンダー自身がつけた名前があるのですが、それをフランス語から日本語に翻訳してもらって、ブレンドの香りや特性、使われている花や香料などを教えてもらいます。それから自分が飲んでみて感じるイメージをふくらませて紅茶の名前をつけます。その次にタグに書く小さなお話を作り、それから絵を描きます。
今ちょうど春の新作の紅茶を作っているのですが、バラやスミレなどのお花のフレーバーティで、名前を「青い鳥とバラ」にしました。バラがメインなのですが寄り添うようにスミレの香りがブレンドされていて、スミレの花を青い鳥として見立てました。いま春の展示会に間に合うようにお話をつくっているところです。

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―では座右の書をご紹介下さい。

一冊となると悩みましたが、この本は表題作の「蛙のゴム靴」*2が子供のときにすごく好きだった作品なので選びました。雲見という蛙の習慣がとてもうらやましかったんです。収録されている「気のいい火山弾」は、ヘンテコな風貌で苔にまで馬鹿にされる火山弾が貴重な標本として人間に持ち去られる話なのですが、子供のころは「みにくいアヒルの子」のように最後は幸せになったのだと思っていましたが、最近読み返してみて全然そうは思えなくて違った感じ方をするようになりました。
最後の「私の行くところは、こゝのやうに明るい楽しいところではありません。けれども、私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。さよなら。みなさん。」というところですが、ひとり標本になるよりも、苔やみんなと暮らす毎日のほうが、ベゴ石にとっては幸せだと思っていたのかなぁということ、それから「自分でできることをしなければなりません」というところが大人になった今、すごく考えさせられます。

いずれは店舗兼アトリエを構えて、紅茶の販売にも力を入れたいという松尾さん。春に東京での展示もありますので、お近くの方は是非お立ち寄り下さい。

WEBサイト:http://katorea.xii.jp

*1 2003年11月開催の恵文社×モダンジュース 共同企画展「Chic pop 宇野亜喜良の世界」
*2 宮沢賢治著/蛙のゴム靴 角川文庫

(七里)