第五回 結城伸子さん(標本、オブジェ作家)

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今回より始まりました新連載。一乗寺周辺のお店をご紹介した「お店探訪」に引き続き、今度は「人」を探訪いたします。個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないでしょうか。
第五回は標本、オブジェ作家の結城伸子さん。2002年から苔玉を作りはじめ、ウェブショップを運営しながら、展覧会を通してマイペースに作品を発表している結城さん。当店では2度目の展覧会を開催中。植物、動物、鉱石、天体。博物学的な観点から、独自の世界観を感じられる作品やウェブショップのコンテンツには定評があり、ウールの手紡ぎやニッティングもしてしまう、という身軽さ。次は何をしてくれるんだろう?と興味をそそられる作家さんです。

―結城さんは、肩書きは何作家になるんですか?いつもどう書こうか悩んで、とりあえず標本、オブジェ作家と書かせていただきましたが。

○○作家と限定するのはあまり好きじゃなくて、写真とかオブジェとか植物とか標本函とか、表現する方法はいろいろあってもいいと思ってるんです。なので、肩書きはなんでもいいんです。

―なんとなくわかります。マイペースというか、本当に好きな事に没頭している作業が自然に形になっていっている感じがしますね。ところで、活動名を本名の結城伸子さんに改められましたが、ずっとmanakoという名前を使われていましたね。それはどういう意味なんですか?

manakoはHPをはじめた頃から使っていた名前です。深い意味はなく、動物の名前がいいなあと思い、マナティからつけました。今から思えば、なんと安易な奴だ‥と思いますが、はじめは作家活動するなんて考えてもいなかったので、親しみやすい名前をつけたのです。本名で活動しようと思ったのは、『森と糸』*1の編集をしてくださった加藤さん*2のアドバイスがあったからです。気持ちを新たにする意味でも、よかったと思っています。

―ウェブサイトのコンテンツが凄く面白くて、お知り合いになる前からよく拝見していました。コーナー名もいいですね。ルナティックブックとか。ウェブもデザインも写真も全部一人でされていて器用に何でもできるんだなあといつも感心してしまいます。写真を見るだけでもかなり楽しめます。ネコ写真とか。

「路地裏ネコ写真館」、好きっていってくださる方が多かったです。自分のうちがネコが飼えないので、近所でも、旅先でも、ついネコの姿を探して日頃の欲求不満?を解消しています。島なんかは、ものすごいネコ密度が高くておもしろいです。

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―普段は何をされているのですか?日記を読んでいると色んなところへ出かけておられますね。

制作以外では‥なにかしら興味をもったことに没頭しているか、図書館に行くか、でしょうか。秋はどんぐり拾いにキノコ狩り(主に撮影)に忙しく、一年で一番忙しい季節です。愛知県内のあちこちの公園、里山をはじめ、静岡・山梨・長野の公園などにも出かけます。

―忙しそうですねー。お家の中はどんな感じなんでしょう。澁澤邸のようなイメージなんですが。かなり物が多そうですよね。蚕*3も飼われているし…植物とかキノコとか多そうですね。

キャビネットに頭蓋骨‥はさすがにありませんが、でも、ウニの殻とか木の実とか、骨とか、色とりどりの繭とか‥いろいろあります。今育てているのが、きれいな緑色の繭をつくるウスタビガという蛾です。なかなか成虫になった姿を見せてくれないのですが。植物もキノコも虫がつきやすいので、厳選して保管しています。

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―今ミニギャラリーで展覧会を開催中ですが、ちょうど良いタイミングでブックレット『森と糸』が出来ましたね。標本函つきの限定BOX*4も作られましたが、これはどのような経緯で出来上がったのですか?

去年、王冠の針山(ウニの殻でつくった針山)をつくった頃から、糸のモチーフでいろいろ広げていくとおもしろそうだなあと思っていたんです。あれこれ手を動かしたり、写真を撮っているうちに、森とつながるイメージがどんどん浮かんできて、小さい本でもつくりたいなあと思っていたのです。ちょうど展覧会の前に、月兎社の加藤さんが「ブックレットでもつくりませんか」とお話をくださって面白そうだなあと思い、ぜひ!とお願いしたのです。本だけではなく、標本付きの特装版もつくったら絶対楽しいはず!とサンプルを何度も何度も作り直し、たくさんやりとりしながら考えました。作業は手伝ってもらったり、大変でしたが、すごくおもしろいものができたと思っています。

―なかなか豪華なセットになりましたね。さて、こちらの座右の書はどういった書物ですか?

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北方地域に生活する民族の文化と歴史を伝える、日本で唯一の民族博物館の案内書です。網走市にあります。今、一番行きたいところなんです。北海道の出身なのに、ここはまだ行ったことがなくって。何年も前から北方民族の文化や暮らしに興味があって、ドキュメンタリーを見たり、関連書を読んだりしていました。わたしが生まれた町はアイヌの人が普通にいて、近所にもたくさんアイヌの子が いて一緒に遊んでいたんです。生まれ育った町を出て、はじめてそこの良さが見えるって言うけれど、なんにもない寒い北の町、そしてアイヌの人たちが普通にいたあの町っていうものが、10年経った今、なんともいえない懐かしい気持ちとともに蘇ってくるんです。この案内書は写真掲載が多く、何度開いても飽きません。アザラシやトナカイの毛皮でつくられた衣服、腸でできたパーカ、魚の皮でできた靴、骨や角でつくられた道具‥。素材の驚きはもちろん、美しい装飾、文様など、すごく好きな世界なんです。

毎日好きな事に没頭しているという結城さん。いろんな場所へ出かけて写真を撮ったり、記録をとったりという生活すべてが結城さんらしく感じてしまいます。制作している作品はいつも新鮮な驚きを覚えるものばかりで、いちファンとして納品が待ち遠しいです。ウェブサイトの日記を読むと、結城さんの毎日が作品のような気がします。読み物としてとても面白いので、是非読んでみてください。(写真は一部、結城伸子さんが撮影されたものをお借りしました。)

 

WEBサイト:http://www.takonomakura.com/

*1 作品写真集。月兎社・加藤郁美さんのもと編集、出版された。
*2 編集、出版社の「月兎社」を主宰されている加藤郁美さん。鳩山郁子さんや勝本みつるさん、ユカワアツコさんなどの本を出版しており、古切手にも造詣が深い。当店も非常にお世話になっている。
月兎社HP: http://www5d.biglobe.ne.jp/calico/get-index.html
*3 蚕も飼っている。写真は名づけて蚕マンション。
*4 『森と糸』の特装版。繭や植物の実、羽、羊毛などの標本を美しい函入りで。そのまま標本箱のようにオブジェとして飾っていただきたい。

(椹木)